自治体DXと民間連携で進める地方創生の事例と運営のポイント
人口減少や担い手不足に向き合う自治体では、民間企業の技術や運用の知見を生かす取り組みが進んでいます。自治体DXが扱う課題は行政手続きだけではありません。交通や防災、空き家対策などに広がる事例から、地方創生につなげるための考え方を見ていきます。
この記事の結論
自治体DXを地方創生につなげるには、地域課題に合わせて行政と民間の役割を組み立て、導入後も運用を見直すことが必要です。上田市の自治体アプリと空き家管理システムの計画は、技術を自治会や市の情報共有につなぐ取り組みです。
- 自治体DXの対象は窓口から交通、防災、空き家対策まで広がります
- 民間連携では技術に加え、企画・運用・改善の知見も生かします
- 交付金の採択額と、導入後の利用や効果は分けて考えます
自治体DXは地方創生にどう関わりますか?
自治体DXは行政手続きのデジタル化に加え、地域の移動、防災、観光、産業振興などを扱う手段です。地域課題を捉え、住民サービスや地域運営の方法を見直すことが地方創生との接点になります。
- 自治体DX
- 自治体DXとは、デジタル技術を活用して行政の業務や住民サービス、地域課題への対応を見直すことです。
人口減少や担い手不足が進む地域では、行政が人員を増やすだけで多様な課題に対応することは難しくなっています。交通、買い物、福祉、教育、防災は別々に見えても、住民の暮らしの中ではつながっています。自治体DXには、個別の業務を電子化するだけでなく、地域の状況に応じて情報やサービスを結びつける役割があります。
総務省の自治体DX推進計画第5.0版は、窓口改革、情報システム標準化、マイナンバーカード活用、セキュリティ対策、AI利用推進を重点に挙げています。地方公共団体の公金収納におけるeL-QR活用も対象です。住民が接する窓口と、行政内部の仕組みを併せて見直す方向が示されています。
総務省の自治体DX推進計画第5.0版では、2025年度中に全都道府県で市町村と連携した推進体制を構築する目標が掲げられています。デジタル人材をプールする機能も含む方針です。自治体ごとに専門人材を確保する課題に対し、都道府県と市町村が連携して取り組む形を目指しています。
自治体DXで民間企業との連携が求められるのはなぜですか?
自治体には予算やIT人材の制約があり、既存業務も複雑です。民間連携によって技術だけでなく、企画、運用、改善の知見を取り入れ、地域に合う方法を考えやすくなります。
自治体の課題は、単独のシステムを導入すれば解決するものばかりではありません。たとえば地域の移動を考える際には、交通だけでなく施設の配置や住民への情報伝達も関わります。行政が地域の課題と方針を整理し、企業が通信、クラウド、地図情報などの専門性を持ち寄ることが、民間連携の出発点になります。
秋田県は、グーグル・クラウド・ジャパン、ソフトバンクと連携協定を結んでいます。クラウド基盤と通信インフラを持つ企業との協力は、限られた人員でデータ活用や業務改革を進めるための取り組みです。企業にとっても、地域での実証を通じてサービスの設計を考える機会になります。
愛媛県では、南海放送とジオテクノロジーズが連携協定を結び、地域情報の発信力とデータ活用を結びつける取り組みを進めています。地域の情報を届けることと、地域の状況を把握することは、住民参加や地域認知を考えるうえで関係します。民間連携では、技術を導入する目的だけでなく、誰が情報を届け、どう活用するかも大切です。
自治体DXに使われる交付金にはどんなものがありますか?
デジタル田園都市国家構想交付金には、デジタル技術による地域課題の解決や魅力向上を支えるデジタル実装タイプがあります。自治体が採択された事業の内容と金額を公表している例もあります。
- デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)
- デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)とは、デジタル技術による地域課題の解決や魅力向上に取り組む自治体を支援する制度です。
内閣官房が示すデジタル田園都市国家構想交付金のデジタル実装タイプは、地域の自主的な取り組みを支援する制度です。対象となる取り組みは行政手続きに限らず、地域の課題解決や魅力向上に向けたデジタル活用に広がります。一方、京都市は、地域再生法に基づく地域再生計画の認定を受け、地方版総合戦略に関わる事業で地方創生推進タイプを活用しています。
佐賀県によると、令和4年度国補正予算のデジタル実装タイプでは、採択事業に事業費の2分の1が交付される仕組みがありました。佐賀県では5事業が採択され、交付金額は合計7,369万3,000円です。施設園芸DX推進プロジェクトや電子申請等推進事業が含まれ、農業と行政手続きの双方が対象になっています。
佐賀県が公表した令和4年度国補正予算の採択事業には、地方創生テレワーク型の「佐賀 Civil Society Organizations(市民社会組織)誘致事業」もあります。交付金額は264万4,000円です。交付金の区分によって支える活動は異なり、デジタル実装だけでなく、地域と人材との関わりをつくる事業にも活用されています。
| 区分 | 事業 | 交付金額 |
|---|---|---|
| デジタル実装タイプ | 施設園芸DX推進プロジェクト | 1,052万6,000円 |
| デジタル実装タイプ | 電子申請等推進事業 | 125万4,000円 |
| 地方創生テレワーク型 | 佐賀 Civil Society Organizations(市民社会組織)誘致事業 | 264万4,000円 |
上田市や各地ではデジタル技術をどう活用していますか?
長野県上田市は、自治体アプリによる情報伝達や空き家管理システムによる情報共有を計画しています。各地の採択事例にも、観光、移住、地域通貨、人材とのつながりづくりなど、異なる目的の取り組みがあります。
上田市は令和6年度実施予定のデジタル化推進事業で、自治体アプリを使った自治会内の情報伝達や災害時の音声配信を計画し、コミュニティFMとの連携も掲げました。上田市によると、事業費は2,673万5,000円、国費採択額は1,336万7,000円で、補助率は2分の1です。情報を配信する仕組みと、地域で情報を届ける主体を組み合わせた計画です。
上田市が令和6年度実施予定として示した空き家管理システムの導入は、事業費980万7,000円、国費採択額490万3,000円です。現地写真や折衝記録などをまとめ、市や自治会等で共有する計画になっています。空き家対策では、担当者ごとに情報を抱えるのではなく、関係者が同じ記録を扱えるようにすることが導入の狙いです。
政府の採択事例には、秋田市・男鹿市・潟上市のLINE活用型デジタル観光パスポート事業、北海道浦河町のデジタル技術を活用した関係人口創出事業が掲載されています。岐阜県神戸町のデジタル地域通貨、大阪府大阪狭山市の電子地域ポイント、静岡市のメタバースを活用した移住促進事業も、地域ごとに異なる課題へ向けた取り組みです。
政府の採択事例には、兵庫県加西市の地域活性化アプリを活用したデジタルマーケティング事業、熊本県八代市の観光プロモーション・データマーケティング事業もあります。京都府亀岡市は文化資料館等を核としたデジタル集落構想、福岡県みやま市は魅力発信事業を掲げています。千葉県内7地域の市町村による令和5年度副業人材マッチング支援事業は、地域外の人材とつながる例です。
自治体DXを地域に定着させるにはどうすればよいですか?
自治体DXを継続するには、導入する技術だけでなく、行政、企業、住民が担う役割と運用方法を考える必要があります。交付金の採択や導入計画は、利用状況や成果とは分けて捉えることも大切です。
交通やまちづくりと結びつくDXでは、アプリやシステムを作るだけでは運用は完結しません。日建設計総合研究所による「モビリティまちづくり」は、自治体の交通戦略、施設計画、運営スキームづくりを視野に入れた支援です。移動の課題を扱う際にも、地域でサービスを続ける仕組みまで考える方向が見られます。
上田市の自治体アプリ計画では、自治会、コミュニティFM、市が情報の伝達や配信に関わります。空き家管理システムの計画でも、市と自治会等による情報共有が想定されています。自治体DXを暮らしに結びつけるには、導入する機能に加え、誰が情報を登録し、誰と共有し、どのように使うかを整理することが欠かせません。
交付金の採択額は、事業や国費負担の規模を表す数字であり、住民サービスや地域経済への効果を表す数字ではありません。自治体は、採択、導入予定、運用という段階を分け、利用状況を踏まえて改善を続ける必要があります。総務省の自治体DX推進計画第5.0版が重点に挙げるセキュリティ対策も、デジタル化と並行して扱う課題です。
- 交通、防災、空き家対策など、地域で取り組む課題を具体化する
- 行政、企業、自治会、住民が担う役割と情報共有の方法を整理する
- 採択額や導入計画と、運用後の利用状況を分けて捉える
- 運用を見直す方法と、情報セキュリティへの対応を考える
よくある質問
上田市の自治体アプリは何に使う計画ですか?
上田市は、自治会内の情報伝達や災害時の音声配信に自治体アプリを使い、コミュニティFMとも連携する計画です。
上田市の空き家管理システムでは何を共有しますか?
上田市は、空き家の現地写真や折衝記録などをシステムにまとめ、市や自治会等で共有する計画です。
佐賀県の施設園芸DX推進プロジェクトに交付された金額はいくらですか?
佐賀県によると、令和4年度国補正予算のデジタル実装タイプで、施設園芸DX推進プロジェクトへの交付金額は1,052万6,000円です。
まとめ
- 自治体DXは窓口改革に加え、交通、防災、観光、空き家対策などの地域課題にも関わります。
- 秋田県と民間企業の連携協定は、行政の課題とクラウドや通信の専門性を結びつける例です。
- 上田市は自治体アプリによる情報伝達と、空き家管理システムによる記録共有を計画しています。
- 交付金の採択額は事業規模を示すものであり、住民による利用や地域への効果とは分けて考えます。
参考情報
出典:がくラボリング
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