伝統工芸

備前焼・伊勢崎淳さんの革新とは?器づくりから陶壁までをたどる

備前焼は、釉薬を使わず、土と火が生む表情を生かす焼き物です。陶芸家の伊勢崎淳さんは伝統的な窯焚きを学び直しながら、日々使う器の形や、建築空間に置かれる陶壁にまで表現を広げました。

この記事の結論

伊勢崎淳さんは、備前焼の穴窯や窯変を受け継ぎながら、持ちやすい器の造形や首相官邸の陶壁に取り組みました。伝統的な焼成と現代の暮らし・空間を結びつけたことが、制作の特徴です。

  • 器の重心や口当たりまで、使い心地を考えて造形しました
  • 窯焚きの条件を形に合わせ、焼けの表情を生かしました
  • 陶壁や美術館の作品へ、備前焼の表現を広げました

備前焼とは?伊勢崎淳さんはどのように作陶を始めたのですか?

備前焼は岡山県備前市伊部周辺で作られる陶器です。伊勢崎淳さんは備前焼作家の家庭で窯焚きに親しみ、美術を学んだ後に本格的な作陶を始めました。

備前焼
備前焼とは、岡山県備前市伊部周辺で作られ、釉薬を使わず土と窯焚きによる表情を生かす陶器のことです。

備前焼は釉薬を使わず、土の質感や窯の中で生まれる発色を生かします。nippon.comは備前焼の歴史を1000年近いと説明しています。三越伊勢丹オンラインストアの2021年の紹介では、産地の伊部には現在も窯元が残るとされています。伊勢崎淳さんは、長く続く産地の技術を制作の土台にしました。

毎日新聞の2025年の報道によると、伊勢崎淳さんは1936年、岡山県備前市に備前焼作家・伊勢崎陽山さんの次男として生まれました。幼いころから窯焚きを手伝い、父の仕事を身近に見て育ちました。窯の火を扱う経験は、後に焼き上がりを造形の一部として考える姿勢にもつながります。

三越伊勢丹オンラインストアの2021年の紹介によると、伊勢崎淳さんは1959年に岡山大学教育学部特設美術科を卒業し、本格的に作陶へ進みました。大学で学んだ美術の視点を、茶器や花器だけに収まらない形へ向けた作家です。備前焼の技術を知ることと、器以外の表現を探ることを並行させました。

伊勢崎淳さんは備前焼の器をどう変えたのですか?

伊勢崎淳さんは土味や窯の表情を生かしつつ、暮らしの中での使われ方から器の形を考えました。持ったときの重心や口当たり、輪郭の見え方まで制作の対象にしています。

伊勢崎淳さんの器づくりでは、古くからある形や用途を守るだけでなく、使い手の暮らしを起点に形を組み立てます。手にしたときの重さの感じ方や、口をつけたときの感触を細かく考え、使うほど変わる土の風合いも見据えました。自然な焼けの魅力と、日常で扱いやすい形は両立するものとして捉えています。

伊勢崎淳さんは、器の外から見える輪郭にも注意を払いました。鋭さを感じさせる形を目指す一方、手で持つ器には持ちやすさも求めます。見た目だけを優先した造形でも、用途だけに形を従わせた器でもありません。使う動作と眺める体験を行き来しながら、備前焼の形を組み直しました。

三越伊勢丹オンラインストアの2021年の紹介では、伊勢崎淳さんが彫刻家のイサム・ノグチさんや、画家・版画家の池田満寿夫さんとの交流から表現のヒントを得たとされています。35歳で訪れたスペイン・カタルーニャでは、ジョアン・ミロさんの創作の原点に触れ、備前焼との向き合い方にも影響を受けました。異なる分野の造形に接した経験も、器の形を問い直す一助となりました。

視点 受け継いだ要素 広げた表現
器の使い方 茶器や花器としての用途 重心や口当たり、暮らしの変化に合わせた形
見た目と質感 土味や自然な発色 輪郭の鋭さと、使うほど変わる風合い
造形の範囲 手に取って使う器 オブジェなど、用途を限定しない作品
伊勢崎淳さんが備前焼で向き合った造形の視点

伊勢崎淳さんは窯焚きと穴窯の伝統をどう生かしたのですか?

伊勢崎淳さんは古い穴窯の復元に取り組み、松割木による窯焚きや窯変の表情を受け継ぎました。焼成条件を作品の形に合わせ、火による変化を造形に組み込んでいます。

窯変
窯変とは、窯の中で火や灰が働くことによって焼き物に生まれる色や模様の変化のことです。

nippon.comによると、伊勢崎淳さんは1960年ごろ、兄の伊勢崎満さんとともに中世の半地下式穴窯の復元に取り組みました。三越伊勢丹オンラインストアの紹介では、穴窯は火の回り方によって焼き上がりに変化が生まれる一方、大量生産には向かず、江戸時代以降は使われなくなったと説明されています。古い窯を探る仕事は、効率よりも焼成表現を重んじる制作につながりました。

伊勢崎淳さんは、松割木で窯を焚く方法や、胡麻・牡丹餅と呼ばれる窯変の表情を受け継ぎました。窯変は火や灰の働きによって現れるため、焼き上がりには幅があります。伊勢崎淳さんは伝統技法を繰り返すだけでなく、温度帯や焚き方を作品の造形に合わせて計画し、火が生む変化の幅を扱おうとしました。

肩の線を鋭く見せる花器では、伊勢崎淳さんは側面に強い還元炎を当て、焼けの出方と形の見え方を結びつけました。器の形を作る工程と窯で焼く工程を切り離さず、火による表情まで含めて作品を考える方法です。穴窯の研究と現代的な造形は、伊勢崎淳さんの制作の中で互いを支えていました。

伊勢崎淳さんの備前焼は器以外のどんな場所に広がったのですか?

伊勢崎淳さんは茶器や花器に加えて、オブジェ、陶壁、インスタレーションにも取り組みました。作品を手に取る器としてだけでなく、建築や日常空間を形づくるものとして考えました。

伊勢崎淳さんは、用途を一つに決めない作品にも取り組みました。備前焼を特別な場で使う道具としてのみ捉えず、暮らしの中で目に入り、空間と関わる造形として扱います。茶器や花器で培った土と火の表現は、オブジェやインスタレーションにもつながり、現代建築やインテリアと向き合う視点へ広がりました。

OHKの2025年の報道によると、2002年に完成した首相官邸には、伊勢崎淳さんが制作した陶壁が設置されています。陶壁は26種類の焼き物850個を組み合わせた作品です。単独の器とは異なり、複数の焼き物を建築の中で一つの表現にする取り組みであり、備前焼を空間の規模で考えた例です。

OHKの2025年の報道によると、2025年7月に開館した備前市美術館には、伊勢崎淳さんのモニュメント「土と炎の記憶」が設置されました。制作に約1年半を要した大作です。産地である備前市の美術館に置かれた作品は、伊勢崎淳さんが広げた、器にとどまらない備前焼の表現に触れられる場となっています。

伊勢崎淳さんの仕事は備前焼の技術継承にどうつながっていますか?

伊勢崎淳さんは窯焚きの技術を探究するとともに、若手作家や学生にも教えました。器の用途、焼成、作品が置かれる空間を一体で考える姿勢も、次の作り手に残しています。

人間国宝
人間国宝とは、重要無形文化財の技術保持者として各個認定された人物を指す通称のことです。

nippon.comと三越伊勢丹オンラインストアによると、伊勢崎淳さんは2004年9月2日に備前焼の重要無形文化財保持者として認定されました。人間国宝とは、重要無形文化財の技術保持者として各個認定された人物の通称です。認定の対象は備前焼という産地全体ではなく、技術を保持する伊勢崎淳さん個人です。

三越伊勢丹オンラインストアの紹介では、伊勢崎淳さんは若手作家や学生に技術を教え、継承にも力を注いだとされています。作り手に受け継がれるのは窯の扱い方だけではありません。器の使いやすさを造形から考え、焼成を形づくりの続きとして捉える姿勢も、備前焼の新たな表現を考える手がかりになります。

OHKの2025年の報道によると、伊勢崎淳さんは2025年度の文化功労者に選ばれ、伝統工芸の保存・伝承・向上への貢献が理由として伝えられました。毎日新聞の2025年の報道では、選出時の会見で人との出会いに恵まれたことや、土と向き合いながら仕事を重ねたことを語っています。技術の探究と人との交流の両方が、制作を支えてきました。

よくある質問

伊勢崎淳さんの備前焼の器では、使い心地をどう考えていましたか?

伊勢崎淳さんは、手に持ったときの重心や口当たりを考え、暮らしの中で使う動作に合わせて器の形を組み立てました。土味や焼けの表情だけでなく、輪郭の見え方にも目を向けています。

伊勢崎淳さんと伊勢崎満さんは穴窯で何に取り組みましたか?

伊勢崎淳さんは兄の伊勢崎満さんとともに、中世の半地下式穴窯の復元に取り組みました。nippon.comは時期を1960年ごろと紹介しています。

伊勢崎淳さんの陶壁は首相官邸でどのように作られていますか?

OHKの2025年の報道によると、2002年完成の首相官邸に設置された陶壁は、伊勢崎淳さんが手がけた26種類の焼き物850個を組み合わせた作品です。

まとめ

  • 伊勢崎淳さんは岡山県備前市の作家として、伝統的な窯焚きと美術で培った造形の視点を制作に生かしました。
  • 伊勢崎淳さんの器は、土味や自然な発色に加え、重心や口当たりなど日々の使い心地も考えて作られました。
  • 兄の伊勢崎満さんと取り組んだ穴窯の復元は、火が生む焼けの変化を現代の造形に生かす仕事につながりました。
  • 首相官邸の陶壁や備前市美術館のモニュメントには、器から建築・公共の空間へ広がる備前焼の表現が見られます。

出典:がくラボリング

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