京都・西陣の細尾が拓く伝統工芸の未来と持続可能な事業モデル
京都・西陣の織元、細尾は、西陣織を着物や帯の用途にとどめず、建築やインテリア、アートへと展開しています。幅広の織機の開発から海外への発信まで、職人技を現代の仕事につなぐ歩みをたどります。
この記事の結論
細尾の事業モデルは、西陣織を帯から建築・インテリア向けの素材へ広げ、製造にオンライン発信やギャラリー運営を組み合わせるものです。2010年の幅150センチの織機開発は、従来の着物用途を超える仕事につながる転機となりました。
- 細尾は西陣織を建築・インテリア向けにも展開
- 幅広の織機が大判の用途への対応を支える
- 製造・発信・体験を組み合わせて価値を伝える
京都・西陣の細尾は、なぜ西陣織の用途を広げたのですか?
細尾は、着物や帯に限らず西陣織の技術を生かす仕事を求め、海外の建築・インテリア市場へ目を向けました。織物を完成品だけでなく、空間に使える素材として捉え直したことが転機です。
株式会社細尾は京都・西陣の西陣織の織元です。Diamondの2021年の記事によると、1688年に創業し、1923年からは着物などの問屋業も手掛けてきました。織る仕事と届ける仕事を続けてきた細尾にとって、新たな用途を探すことは、受け継いだ技術の使い道を増やす挑戦でもあります。
伝統工芸には熟練の手仕事という強みがある一方、需要の限定、後継者不足、価格競争の難しさがあります。Project Designの2017年の記事では、西陣織の売上が30年で10分の1になったという細尾側の発言が紹介されています。細尾が海外市場を探った背景には、従来の用途だけに頼らない仕事づくりへの関心がありました。
Project Designの2017年の記事によると、先代の細尾真生氏は2006年、パリの見本市に西陣織を張ったソファを出品しました。帯とは違う形で織物を見せる試みは、西陣織を家具や空間に使う素材として提案する第一歩でした。海外の買い手に届けるには、技術そのものに加え、使われる場面を示すことも必要になります。
Advertimesの2017年の記事によると、現在の代表取締役社長である細尾真孝氏は、音楽活動や大手ジュエリーメーカー勤務、フィレンツェ留学を経て2008年に家業へ入り、翌2009年ごろから新規事業を担当しました。西陣織の技術や素材を着物・帯だけに結びつけず、海外市場で使える素材として提案する方向へ事業を広げています。
細尾は西陣織を建築やインテリアにどう広げましたか?
細尾は大判の織物をつくる設備を開発し、建築家やブランドが手掛ける空間へ西陣織を提案しました。用途に合わせた製造の変化が、壁面や家具などへの採用を支えています。
Discover Japanの2023年の記事によると、2009年にパリの展覧会へ出した帯が建築家ピーター・マリノ氏の目に留まり、店舗内装の仕事につながりました。西陣織を装うための品としてだけでなく、空間を構成する素材として見せたことが、新たな仕事の入り口になりました。
Discover Japanの2023年の記事によると、従来の西陣織は幅約32センチが基準でした。細尾はインテリア向けの大判の用途に対応するため、2010年に幅150センチの織機を開発しています。Project Designの2017年の記事では、周囲から反対の声もある中、開発に1年をかけたと紹介されています。用途を変えるには、提案だけでなく製造設備にも手を入れる必要がありました。
西陣織が壁面や椅子張り、カーテンなどに使われると、役割は身に着けるものから場をつくるものへ広がります。Advertimesの2017年の記事では、細尾の西陣織がクリスチャン・ディオールの世界100都市の店舗で壁面や椅子張りに使われたと紹介されています。細尾は職人技を量産品と価格で競わせるのではなく、空間に合わせた素材の価値として届けてきました。
| 用途 | 仕事の内容 | 紹介された例 |
|---|---|---|
| 店舗・ホテル | 壁面、椅子張り、カーテンなどに織物を使う | Advertimesの2017年の記事では、クリスチャン・ディオール、シャネル、ブルガリ、ルイ・ヴィトンの店舗やザ・リッツ・カールトンでの使用を紹介 |
| 自動車 | 車内の部材にテキスタイルを使う | ZUU onlineの2026年の記事では、2020年のレクサスLSのドアトリムへの採用を紹介 |
| 建築 | 建物の外壁に織物の技術を展開する | ZUU onlineの2026年の記事では、大阪・関西万博の建築外壁に関する実績を紹介 |
細尾は製造以外にどのような仕事を組み合わせていますか?
細尾は西陣織の製造に、オンラインでの発信、アーティストのマネジメント、ギャラリー運営を組み合わせています。作品をつくるだけでなく、背景を伝え、見せ、体験してもらうところまで事業に含めています。
細尾は2019年にオンラインプラットフォームを立ち上げました。オンラインでの発信は販路を増やすだけでなく、素材や技法、作り手、背景にある文化を伝える役割も担います。手仕事の価値が外観や価格だけでは伝わりにくいとき、作品が生まれた文脈を届けることは、買い手が選ぶ理由を考える助けになります。
細尾の事業には、アーティストのマネジメントやギャラリー運営もあります。工芸品を単体の商品として販売するだけでなく、美術やデザインと結びつけ、作品を見る機会や文化に触れる機会をつくる取り組みです。製造、発信、展示を別々にせずつなぐことで、西陣織に関心を持つ人との接点を増やしています。
細尾が担う製造と問屋業に、建築・インテリア向けの素材販売や文化を伝える仕事が加わると、事業は帯の販売だけに依存しない形になります。ただし、仕事の種類が増えるだけで技術継承が進むわけではありません。職人の手仕事と、企画、営業、発信を結びつけ、需要の変化に応じて用途を提案し続けることが求められます。
細尾は海外やアートの分野へどう発信していますか?
細尾は西陣織を海外の店舗空間や美術の文脈へ届けています。建築家、デザイナー、クリエーターとの協業を通じ、織物の技術を異なる分野で使える価値として提案しています。
Advertimesの2017年の記事では、細尾がピーター・マリノ氏の手掛けるクリスチャン・ディオールやシャネルの店舗内装に素材を供給してきたと紹介されています。建築・インテリアの設計者と仕事をする場合、西陣織は完成した帯ではなく、空間の表現に組み込む素材になります。織元の技術と設計者の構想を結ぶことが、海外での用途を広げました。
京都の工芸関係者らによるGO ONも、分野を越えた取り組みの例です。Advertimesの2017年の記事では、伝統工芸の技術や素材を企業・クリエーターに提供し、新しい価値を生み出す活動として紹介され、細尾真孝氏も参加者として取り上げられています。工芸の用途を広げるには、織り手の外側にいる人との接点も役立ちます。
細尾はヴェネチア・ビエンナーレ2026への挑戦を計画し、西陣織を国際的なアートの場で提示しようとしています。Discover Japanの2023年の記事では、細尾真孝氏が西陣織の上位にある考えを「究極の美」と表現し、美を生み出す基盤として西陣織の協業システムを挙げています。美術や空間との接点は、技術を保存するだけでなく、新しい見せ方を考える機会にもなります。
伝統工芸を持続的な事業にするには何が必要ですか?
伝統工芸を続けるには、職人技を受け継ぐことと、技術が使われる仕事をつくることを一緒に進める必要があります。細尾の歩みでは、設備開発、用途の提案、販売、体験、海外発信がつながっています。
細尾の幅広の織機開発は、着物と異なる大判の仕事を引き受けるための製造面の変化でした。建築やホテル、商業空間で使う提案は、職人技の希少性を空間づくりの価値へ結びつけます。一方で、伝統工芸が抱える後継者不足や需要の限定に向き合うには、採用先を増やす取り組みと、技術を担う人を育てる取り組みの両方が欠かせません。
細尾の事業は、織り手だけで完結するものではありません。デザイナーが用途を考え、企画や営業が仕事につなぎ、ギャラリーやオンラインで作品の背景を伝える役割もあります。職人が培った技術を現代の生活や空間に届けるには、つくる人と、見せ方や届け方を担う人の連携が必要です。
西陣織を持続的な産業として考えるとき、海外ブランドへの採用や新たな用途は一つの進展です。同時に、職人の育成、原材料、製造に伴う環境負荷といった課題も、事業を続けるうえで見落とせません。細尾の取り組みは、伝統技術を固定された形で残すのではなく、使い道と届け方を更新しながら仕事につなぐ実践です。
- 受け継ぐ技術と、技術を担う職人の育成を考える
- 着物や帯のほかに、技術を生かせる用途を探す
- 新たな用途に必要な製造設備や協業相手を検討する
- 作品の技法や文化的背景を買い手に伝える
- 製造、企画、販売、展示、海外発信の役割をつなぐ
よくある質問
細尾はなぜ幅150センチの織機を開発したのですか?
細尾はインテリア向けの大判の織物に対応するため、2010年に幅150センチの織機を開発しました。Discover Japanの2023年の記事によると、従来の西陣織は幅約32センチが基準でした。
細尾の西陣織はクリスチャン・ディオールの店舗でどう使われましたか?
Advertimesの2017年の記事では、細尾の西陣織がクリスチャン・ディオールの世界100都市の店舗で、壁面や椅子張りに使われたと紹介されています。
細尾はオンラインで西陣織の何を伝えていますか?
細尾は2019年に立ち上げたオンラインプラットフォームを通じ、作品の素材や技法、作り手、背景にある文化を伝えています。販売に加え、手仕事の価値を知ってもらうための発信です。
まとめ
- 京都・西陣の細尾は、西陣織を着物や帯に加え、建築・インテリア向けの素材として展開しています。
- 細尾が2010年に開発した幅150センチの織機は、大判の織物を必要とする用途への対応を支えました。
- 細尾は製造にオンライン発信やギャラリー運営を組み合わせ、西陣織の背景を伝える接点を増やしています。
- 伝統工芸を仕事として続けるには、新たな用途をつくることと、職人技の継承を並行して考える必要があります。
出典:がくラボリング
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